TOPお客様の声味の素株式会社/松谷化学工業株式会社/F-LINE株式会社

製品物流と原料調達で31ftコンテナ往復輸送を実現

味の素株式会社/松谷化学工業株式会社/F-LINE株式会社

兵庫県伊丹市に本社・工場を置く松谷化学工業(株)はでん粉の総合メーカーで、味の素(株)製品の原料を供給しています。健康志向が高まる中、デキストリン(ファイバー素材)や希少糖素材も注目されています。

今年3月、味の素と松谷化学工業は、F-LINE(株)の協力を得て、31ftコンテナの往復輸送を始めました。鉄道利用は東京貨物ターミナル駅―安治川口駅間で、下りは味の素の川崎地区(神奈川県)にあるグループ会社を含めた複数工場の製品を積み、西日本の拠点である西日本物流センター(兵庫県西宮市)へ運びます。上りは松谷化学工業が味の素に納めるでん粉等原料を、F-LINEの大黒バルク営業所(神奈川県横浜市)へ輸送しています。

味の素(株)物流企画部は「味の素は東日本大震災で主要な物流倉庫が被災し、供給体制に支障を来たした経験を踏まえ、現在は東西2拠点体制を採っています。より強靭なSCM体制を敷くべく、在庫以外に製品物流・原料調達も複線化を図っています。鉄道は従来12ftコンテナ(バラ積み)を多用していましたが、トラックと同様のスタイルで複線化を図るため、パレット化とともに31ftコンテナを使うことにしました」と導入の背景を話しました。

F-LINE所有(レールライナー®のロゴ入り)と全国通運(株)所有の31ftコンテナを用いて週6便を仕立てていますが、味の素グループの生産拠点は関東に多く、下り貨物が多いのが特徴です。一昨年からF-LINE®(※)の取り組みとして、関東~関西で(株)Mizkanと31ftコンテナの往復利用も行っています。

味の素のグループ調達センター原料グループは「地球環境保護の観点からもモーダルシフトは重要ですが、それによる大幅なコスト増は避けたい」と、シフト可能な取引先を慎重に選定。味の素が調達する原料の中で、「常温でかさが大きく、それほど重くないもの、物量が十分確保できるもの」という条件を満たす、でん粉加工品やデキストリンを製造する松谷化学工業が選ばれました。

一方、原料を使う各工場では、ジャストインタイムの細かい納入が求められます。元の仕組みを変えずにモーダルシフトをするため、グループ調達センターが工場と松谷化学工業との間に入り、双方の意向をすり合わせました。結果、いったんF-LINEの大黒バルク営業所へ入庫し、必要とされる分を各工場へ配送することにしました。従来大黒バルク営業所から各工場へは、トラックが原料をピストン輸送しています。

「これまでプッシュ型で調達していたものをプル型に変更しようとする場合、荷物のボリュームをまとめるのが難しい。大黒バルク営業所からのピストン輸送に載せることで、コストアップを抑えることができました」。

松谷化学工業東京支店第二部2グループ課長は「当社は横浜のメイン倉庫から、関東地区のお客様に供給しています。そのうち、味の素様納入分の一部を大黒バルク営業所に移したことになります。トラック輸送を単純に鉄道シフトすると若干コストアップとなったため、社内調整に苦労しました。実現できたのは大黒バルク営業所からのピストン輸送のおかげです。製品の一部だけをシフトすると入出庫管理も2ヵ所になってしまいますから、味の素様のようにボリュームのある取引先でないとかなり難しい」と振り返りました。週に2~3便が松谷化学工業の原料を積み、往復輸送となっています。

F‐LINE®の担当でもある味の素の食品事業本部物流企画部物流基盤グループ長は「ドライバー、船舶、倉庫でも、人手不足は大きなテーマです。F‐LINE®でも持続可能な物流環境の構築という意味で、コンテナのラウンド輸送は効果的。サプライヤーである松谷化学工業さんにご協力いただいたのは意義あることだと感じています」と評価。

F-LINE(株)マルチモーダルサービスセンター担当マネージャーは「運用している31ftコンテナにGPS機能を備え、動態管理をしています。交通情報や台風情報などをパネルにして、不測の事態には代替手段をとれるように備えています。モーダルシフト推進には、しがらみや商習慣の違い、納品時間やコストの問題など課題も多いが、CO2排出量削減、人手不足解消にも効果が期待できることをPRしていく必要があります」と述べました。現在、味の素の長距離幹線輸送(片道500km以上)は鉄道が4割、船が4割、トラックが2割程度です。

最後に同課長は、「CO2排出量が半減したと聞くと、モーダルシフトに参加してよかったと実感します。煩雑な事務作業が加わりましたが、実質的に少しコストが下がっていますので、会社にも貢献できました」と話しました。

※F‐LINE®(Food Logistics Intelligent Network)は、味の素(株)・カゴメ(株)・(株)Mizkan ・日清オイリオグループ(株)・日清フーズ(株)・ハウス食品グループ本社(株)の6社が構築した食品企業物流プラットフォーム。より効率的で安定した物流力の確保と食品業界全体の物流インフラの社会的・経済的合理性を追求することを目的に設立された。