JR貨物の技術力のすごさ
これまでの安心、安全を守り続ける使命と、今後、物流業界を牽引するための挑戦が求められます。
その原動力になってくるのは、創業以来、蓄積してきた「確かな技術力」。
技術力を基に、今後も様々なフィールドで当社ならではの価値を提供していきます。
「IT-FRENS」は、トラック会社などの利用運送事業者様の予約にかかる作業を軽減し、コンテナ輸送のご依頼をいただいたお客様への対応をスピーディに行うシステムです。また、輸送の平準化を行う機能により、お客様の納期に合わせてコンテナの輸送ルートを調整し、土日に輸送するコンテナを増やすことで、平日の実質的な輸送力を増やしています。「TRACE」は、GPSとRFIDタグ(無線ICタグ)を組み合わせて、貨物駅構内におけるコンテナの位置管理を行うシステムです。このシステムにより、コンテナの位置の把握が数十センチ単位で可能となり、荷役時間の短縮と輸送の正確性を高めています。
池田 憲亮Kensuke Ikeda
経営統括本部/情報システム部
ポイントとなるのは、「見える化」。輸送業務を、リアルタイムで把握できるITシステムを導入することで、鉄道コンテナ輸送全体の省力化・効率化、列車輸送中・駅内外での貨物追跡を実現しました。今までは経験や知識を持った、ベテラン社員が経験に基づき属人的に時間をかけて行ってきた業務も多かったのですが、このITシステムによって、正確かつ効率的な運営が可能になりました。これにより、業務コスト低減による価格競争力の強化や輸送品質向上によるサービスアップを実現しました。
また、当システムの導入によって得られるビッグデータは情報の宝庫。「いつ、誰が、どこで、何をやったか」というのが、全て把握できます。AI、自動化などITテクノロジーは日々、進化しています。まだ実現化に向けては沢山の課題もありますが、将来的には車両の「遠隔操作」や「自動運転」など、さらに新しい輸送業務の姿を追求していきたいです。
機関車の運転席に設置した IoT 端末から車両の状態のデータを自動的に地上サーバに伝送・蓄積することで、リアルタイムに機関車の状態監視を行います。データを蓄積して、故障予測等、様々な活用が可能。新たに機関車の機器・設備の状態のデータを蓄積し、そのデータを解析することで、 故障の予測や機器の劣化把握を行い、車両故障の削減や復旧までの時間短縮により 安定輸送の向上を図ります。
又多 啓之Hiroyuki Matada
鉄道ロジスティクス本部/車両部
「リモートモニタリングシステム」の開発には、数多くの課題がありました。その課題の一つひとつを、機器を提供しているメーカーとも協業し、解決していく過程がエキサイティングでした。大切なことは、真のニーズを汲み取ること。「コストを優先させるのか?」「耐久性を優先させるのか?」一つの決断で、ゴールが変わってきます。プロジェクトのオーナーとして、車両との相性も考慮し、様々な挑戦を行いながら形にしていきました。
課題は様々ですが、ユーザー目線も重視しました。筐体の寸法、大きさなども考慮し、機器を実際に設置する場所が運転手の視界にどう影響を与えるかなど、相手の立場にたち設計を行っていきました。それに加え、最終的にデータを収集することが目的なんですが、機械工学、物理学、材料学など、実際の現場に即した条件を想定することが大変ではありました。しかし、このシステムが標準搭載されると、車両調査の方法、その先には仕事の仕方も変革する可能性があり、大きなやりがいを感じながら挑戦することができました。
南福井駅は、福井県内における貨物鉄道輸送の拠点駅です。北陸新幹線の建設に伴い新幹線用地を生み出すため、大規模工事を実施しています。コンテナを本線上の列車から積卸しすることで、駅構内での複雑な入換作業が不要な「E&S(Effective & Speedy container handling system)」も導入され、大幅なリードタイムの短縮も可能。新しい物流の拠点として期待されています。
西川 寛朗Hiroaki Nishikawa
鉄道ロジスティクス本部/保全工事部
南福井駅大規模工事の特徴としてあげられるのは、「E&S」の導入です。元々は「入換方式」で、列車が到着したら、貨車を荷役ホームのある線路まで移動し積卸を行っていたので多くの線路が必要でした。「E&S」の採用により線路を少なくすることができ、これまでの機能を維持しながら新幹線建設用地を生み出したうえ、さらにリードタイムも短縮できる、「一石三鳥」の方式です。実現に向け、限られた用地の中で「どの位置に設備を持ってくるか」「線路をどうつなげるか」など、様々な課題を解決していきました。
これにも増して考慮しなければいけないのが、現状の貨物営業を行いながら工事を進めるということです。新幹線工事の進捗も計算しつつ、列車の走行に使用するエリアと工事を行うエリアを次々に切り換え、貨物営業と工事施工を両立できる工程を考えていきます。図面上ではうまくいくと思っていても、現場に行くと色々な問題が出てきます。これらを解決して工事を完遂できたときには、大きな達成感を味わうことができます。
現在、貨物駅では列車が載っていない状態のレールのゆがみ(軌道変位)を測定し、軌道補修の要否や優先度を判断する指標の一つとしています。この装置を機関車に実装できれば、列車荷重がかかった状態の動的な軌道変位を測定できるようになり、安全性の向上が図られます。軌道変位のなかでも、特に低速走行時の脱線に直接的な影響を及ぼす軌間変位と平面性変位に特化した動的値を測定できます。
岡本 学Manabu Okamoto
東京メンテナンスステーション
鉄道車両は、車輪からレールに対して大きな力を加えながら走行しています。その際に、「レールとレールの間隔が何ミリ押し広げられるか」「何ミリ傾き、ねじれるか」が、走行安全性に関わってきます。これら数値を正確に測定し、安全性と保守業務の効率性を向上させることが「軌道検測装置」の役割です。
そして、この技術は、位置情報や時間情報と軌道変位を関連付けて取得できることも大きな魅力です。機関車がいつ、どこを走行し、そのとき軌道はどのような状態であったのか。どこをどの順番で、どのような頻度で補修すれば、効果的に安全性を保てるのか。これら情報を可視化できれば、伝統的な保線の世界において、予防・予測という新たな時代を切り拓く可能性が見えてくるのです。