循環型社会実現
の一翼を担う者として。

ゴミ焼却灰再利用に向けた輸送プロジェクト

文学部卒
鉄道ロジスティクス本部 営業統括部 環境事業部

相澤 宏行Hiroyuki Aizawa

文学部卒
鉄道ロジスティクス本部 営業統括部 環境事業部

PROFILE学生時代はバレーボールに熱中。レシーバーとして活躍した。1998年入社。長野県 南松本駅での営業フロント業務。その後、関東支社および本社での総務・人事部門を経験した後、グループ会社である全国通運(株)に出向。東日本大震災後の災害廃棄物を運搬する案件に参加。いわゆる静脈物流と呼ばれる仕事を初めて経験。その後、出向終了とともに現職。

需要拡大を続ける、静脈物流。

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循環型社会、エコ・リサイクル。環境問題への社会的関心が高まるなか、いわゆる静脈物流へのニーズが高まり続けている。静脈物流とは、モノの製造過程や輸送、販売過程で生まれる産業廃棄物や、それ以外の一般廃棄物輸送のことである。JR貨物では、1995年から廃棄物輸送を手がけ、社会的ニーズの拡大を受けて1998年には環境事業部を設立。同事業部ではすでに、ゴミ処理施設と連携した粗大ゴミ、ビン・缶・ペットボトル、家庭用電池などの輸送や、処理困難汚泥など特殊な廃棄物を安全・確実に運ぶ技術・手法も確立。多様な廃棄物の輸送を手がけてきた。

ゴミ飽和状態の東京から、焼却灰を運び出せ。

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循環型社会実現に向けた技術革新は世の中で数々生まれているが、その一つが“ゴミ焼却灰をセメント原料として活用する”技術だ。大手セメントメーカーがこの技術を持つが、運用には、清掃工場で出た焼却灰を安全・確実にセメント工場へと輸送することが不可欠。JR貨物はすでにこの輸送技術を確立させ、2000年代前半より、まずは地方での焼却灰輸送を成功させてきた。その実績が認められ、いよいよ東京都の自治体からJR貨物に声がかかったのが2014年。命を受けたのが、相澤 宏行だった。 「東京のゴミ問題は深刻です。リデュース・リユース・リサイクル(3R)の仕組みが確立されていても人工の密集する東京での最終処分場の問題の解決は困難を極めます。さらなる有効策を打つ必要がありました。そこでJR貨物も一翼を担っている焼却灰の再資源化に着手できないかとご依頼をいただきました。」 ゴミ焼却灰の再資源化にJR貨物が欠かせないのには、理由がある。再資源化技術を持つセメント工場は、北海道、青森県、岩手県、新潟県、山口県、福岡県、大分県と東京から離れたエリアに存在している。必然的に東京から各地の工場へ大量かつ長距離の運搬になるのだ。トラックなどでの輸送は非現実的であり、鉄道輸送の強みが求められた。

さらに安全に、さらに確実に。妥協なき仕事を重ねる。

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ただし、焼却灰の輸送にはクリアすべき課題がある。まずは当然のことだが、わずかな漏れも許されないこと。次に、焼却灰を積載した際にコンテナ内で灰が偏ることなく、コンテナ一つ一つの重心が真ん中に来るようなオペレーションを築かなければならないことだった。 「コンテナからの漏れは絶対に許されませんでしたから、今回は新たな専用コンテナ開発に挑みました。また、輸送現場でのオペレーションも、安全を守り抜くため、焼却灰輸送専用に構築し直すという決断もしました」 新コンテナ開発に向けて相澤は、コンテナメーカー、清掃工場を運営する自治体と一体となって取り組み、試行錯誤、妥協なき改良を重ねた。そして輸送オペレーションの構築においても、清掃工場や経由する貨物駅に何度も足を運び、積み込み作業手順を確認。適切なオペレーションを組み立てるとともに、作業スタッフたちの協力を仰いだ。 「新コンテナ開発、清掃工場での積み込み作業、駅での入れ換え作業、セメント工場での運用と、あらゆるフェーズで創意工夫を重ねました。難易度は高くプレッシャーもありましたが、各セクションのスタッフが力をあわせることでやり抜くことができました。どんな「モノ」を運ぶにしても、小さな危険さえ未然に防ぐ安全な輸送と少しの漏れも許さない確実な輸送を実現する。それは、JR貨物で働く者として絶対にゆずれないこだわりであり、誇りなんです」 相澤らの努力が実を結び、試験輸送を経て2015年、本格輸送がスタート。初年度の輸送実績は5,000トン(年間)であったが、2018年は輸送先工場も拡大し30,000トン(年間)と大幅に拡大した。焼却灰の問題に頭を悩ませている自治体は、東京のほか各地に存在している。今後も焼却灰輸送へのニーズは高まることが予想されている。

どんな困難も必ず突破できる。自分たちはチームだから。

廃棄物輸送は、技術的にクリアすべき難題も多い。しかし、相澤はこう話す。 「こいつは難しいなぁ、大変だなぁ、と思うことはあっても、無理だと思うことはないんです。諦める瞬間というのは、はっきり言ってない。それはJR貨物だからだと感じます。風通しの悪い会社ではありませんし、部門や職種の“垣根”なんてものも元々ない。営業が困っていれば輸送が、本社が困っていれば支社が助けてくれる。支社が困っていれば現場が助けてくれる。<チームJR>ですべてのことにあたっていくんだ、という気持ちが会社全体に流れています。だからどんな難題を前にしても、よしやるぞ、と思えるんです。今回の焼却灰輸送プロジェクトも、<チームJR>で創りあげました。」 さらにこう続ける。 「ゴミ焼却灰の再利用に貢献できたことは確かに誇らしい。でも循環型社会を実現するためには、この他にも多角的な取り組みがもっともっと必要です。それに向けて、JR貨物としてもまだまだできることがきっとある。鉄道輸送という切り口からの新しい価値創造・技術革新、各企業、自治体ととも連携した新たな取り組みに、環境事業部としてもチャレンジしていきたいですね」 相澤の目は、未来を見つめていた。

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