モーダルシフトの
汽笛を鳴らせ。
物流効率化の新たな一手。

鉄道貨物輸送新時代を築く、『イオン号』実現プロジェクト

理工学部精密機械工学科卒
営業統括部 営業部

佐藤壮一Soichi Sato

理工学部精密機械工学科卒
営業統括部 営業部

PROFILE「大企業より少数精鋭の会社のほうが、自分のやりたいことができる」と考え、1993年JR貨物へ入社。東北支社にて駅業務・指令員などを担った後、香港での海外研修を1年間経験。帰国後、JR貨物の国際貨物の窓口となるグループ会社の設立に尽力。その後、本社営業部を経て山口営業支店へ異動し営業畑を歩む。山口営業支店・支店長を約2年務め、2010年より本社・営業部へ。モーダルシフトの象徴的存在、『イオン号』実現の陰の立役者。現在も市場のニーズをとらえたサービス・商品づくりに頭脳を使う日々を送っている。

物流危機と環境問題を同時に解決せよ。

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2014年12月14日。晴天に恵まれた東京貨物ターミナル駅に、高らかな汽笛が響いた。鳴らしたのは、企業間共同輸送という新しい鉄道貨物輸送のカタチを具現化した、24両編成の『イオン号』だ。流通最大手のイオン株式会社が、仕入先メーカーと連携し共同輸送列車を編成。飲料・食品メーカーや化学メーカー4社からイオン各店舗・取引先に納入する商品を一本の列車に載せた。1回の運行で12フィートコンテナを120個運ぶことができ、東京〜大阪間を結ぶ。その第一号列車がこの日、東京貨物ターミナル駅を出発しようとしていたのだ。では、イオン号誕生の背景に何があったのか。
年末商戦を控えたこの時期は例年、各メーカーから量販店に向けた出荷量が格段に増加する。しかし近年、トラックドライバー不足という社会課題が深刻化。物流の主軸をトラック輸送としてきた企業は「このままでは、モノが運べなくなるかもしれない」という危機感を募らせていた。また、国際的な課題でもある環境問題は、日本中の企業にとって無視できない課題。日本全体を取り巻く物流危機と環境課題に、多くの企業が頭を悩ませていたのだ。そしてその2つを同時に解決したのが鉄道輸送であり、『イオン号』だったのである。
報道陣を集め大々的に開催されたイオン号出発式で、JR貨物・石田会長はこう挨拶をした。「イオン号の汽笛はモーダルシフトの本格始動を告げる号砲になる」と。複数の荷主による共同輸送はJR貨物として初の試み。そしてこの新たな取り組みは、JR貨物がモーダルシフト推進の牽引役として力を発揮していくという宣言でもあった。

サステナブル社会実現のため、鉄道ができること。

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イオン号実現を陰で支えたのが、JR貨物営業部に所属する佐藤壮一だ。話は2008年に遡る。
「以前からイオン様は、環境問題に高い意識を持たれており、物流に関しても大きな危機感を抱いていらっしゃいました。環境問題やトラックドライバー不足への対応はもとより、安定的な輸送を実現しながら物流の効率化を進めることで継続的な取り組みを叶え、サステナブル経営の実現を図りたいという意志を持たれていたのです。そこで、課題解決への道筋を探ろうと2008年、イオン様とJR貨物の2社が幹事となって『イオン鉄道輸送研究会(当時:モーダルシフトプロジェクト)』を発足。以降、物流効率化とCO2排出量削減に向けたアイデア検討会や物流効率化の最新成功事例の共有などを実施してきました。研究会はその後、飲料メーカー様、食品メーカー様、製紙メーカー様、輸送事業者様など、モーダルシフト推進という志に共鳴いただける企業様に続々とご参加いただき、2016年現在では32社が集う会にまでなりました」
この研究会活動から最初に花開いたのが、複数企業によるコンテナ共同利用だった。
「例えば九州〜東京間のルートで、上りはA社、下りはB社という具合に利用し、研究会の会員企業様が複数社でコンテナを共用するという取り組みです。物流コストの軽減やCO2排出量削減などの効果は大きく、同じ手法で別ルートにも派生するほどの施策でした」

クライアントとJR貨物のWin-Winの取り組みを。

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このコンテナ共同利用がさらなる進化を遂げたのが、『イオン号』だった。イオン社は慢性的な物流課題の中でも特に、年末商戦に備えた安定輸送をどう確保すべきか、打開策を探していた。その話を受け、佐藤が目を付けたのが日曜日だった。国内工場の生産活動は平日が中心であり、休日は工場からの出荷量が減る。そのため休日は比較的コンテナの積載率は低く、運休する路線も多かったのだ。
「週末の輸送余力を活用すれば新しい設備投資をせずとも輸送量を増やすことができ、イオン様に安定輸送を提供できます。またJR貨物としても運休列車を稼働させることは、直接収益向上につながること。イオン社にとっても私たちにとってもメリットのあるWin-Winの取り組みであると考えました」
週末の輸送余力活用が、イオン号の原点となるアイデアだった。とはいえ、イオン社単独では一列車分のコンテナは埋まりきらない。そこで佐藤は、鉄道研究会の会員企業にイオン様と共同で呼びかけをした。すると、同様の課題を感じていた企業が続々と共同輸送に手をあげてくれた。いずれの企業も年末に向けた安定輸送確保に課題を持っていたのだ。
「それぞれの企業にはそれぞれの経営課題があり、ニーズがあります。それらを上手くマッチングできるアイデアを提示できれば、多くのクライアントを笑顔にできるのだと実感しました」
もちろん休日に新たな列車を運行させるには、現場も含めJR貨物社内各所の協力は不可欠。苦労も多かった。しかし、佐藤はこう話す。
「新しい取り組みの実現に向けて、会社が1つになって動いたという実感があります。JR貨物らしい絶妙な連携プレーもあり、一体感を感じながらプロジェクト実現に向けてひた走ることができました」

お客様の期待を超えるアイデアを、模索し続けていく。

2014年度、東京〜大阪間を2往復したイオン号は、その後も大型連休に合わせた運行が続いている。また2015年には、長野〜東京間でイオン社とサッポログループ社共同の列車運行も実現。さらに一連の取り組みは、国土交通省・経済産業省などが主催する『第14回 グリーン物流パートナーシップ会議』にて経済産業大臣表彰も受賞。業界の枠を超えた物流効率化を実現したことが大きく評価された。
それ以降、鉄道を使った共同輸送は広がりを見せている。例えば、2017年1月にはキリンビールとアサヒビールが大阪・兵庫~石川間の共同輸送を開始。年間1万台分の大型トラック輸送を減らしている。最近ではビール大手4社が北海道内での共同輸送を発表。ライバル会社が手を組むという今までにない輸送方法が次々と始まっている。
「モーダルシフトの波が来ていることは確かです。今まで、国内物流の主軸をトラック輸送に置いてきた企業様が「運べるところはまず鉄道で」と考えてくださるようにもなりました。ただし、イオン号の成功で慢心せず、今後も気を緩めずに進化を重ね新しいサービスを生み出し続けていきたいですね。物流も単なる価格競争を行う時代はもう終わった、と私は思っています。鉄道貨物輸送ならではの強みを見定めて、いかに優れたアイデアを生み出せるかが勝負です。例えばイオン号も現在は温度管理が不要な製品を運んでいますが、冷蔵・冷凍機能のついたコンテナや特殊保冷剤などを導入することで、また新たなニーズに応えることができるでしょう」
佐藤はこれからも、多くの企業が抱える経営課題を解決するため、あるいはこの社会全体が抱えている課題を解決するため、新たなアイデアを模索し続けていく。

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